作者関口 浩 サイズ(cm)F6号

 

金盃の月 F6号

~月の存在~

「日本画」は、絵の全てを作家が描きつくして見せる絵画ではなく、鑑

賞者が作品を観て自らイメージすることにより、初めて成立する絵画だと

考えています。例えば、平安絵巻の「引目鉤鼻」などに代表されるように、

物語の人物表情は鑑賞者の知識や教養、生活環境などの様々な要因から幾

重にも変化し想像でき、そこに鑑賞者自身が「心理表像(無限に創造して

いくイメージ)を生み出すこと」が日本画の特徴の1つであり、重要な要

素だと思っています。日本では縁起の良い印象の「月」も西洋では人間を

惑わす存在として捉えられている場合もあり、人により印象は様々です。

刻々と変化する「月」は、それぞれ観る側の世界観や日々の精神状態に

よって美しく見える時もあれば、戒めて見える時もあります。「月」を描

く意味は、鑑賞者が作品中の「月」を観ることにより、自分自身の心の内

を自然と投影し、「個」に内在する自らの心の動きを改めてそっと感じ取

ってもらうことにあるのです。

 

関口 浩 略歴

1968年 埼玉県生まれ

1995年 多摩美術大学大学院 美術研究科修了

個展、グループ展 毎年開催

2021年 関口浩 現代日本画展

故 松尾敏男氏に師事